ブドウ球菌、黄色(おうしょく)ブドウ球菌
ブドウ球菌は、直径 1µm程度のグラム陽性球菌で、ブドウの房状の不規則な配列をする、通性嫌気性の有機栄養菌である。
ブドウ球菌食中毒は、黄色(おうしょく)ブドウ球菌(きゅうきん)が食べ物を汚染し、それが増殖してエンテロトキシンと呼ばれる腸管毒(ちょうかんどく)をつくりだし、その毒素を含む食べ物を食べることで、約3時間後に発症する急性胃腸炎です。
この食中毒は毒素型食中毒で、エンテロトキシンは耐熱性があり、黄色ブドウ球菌が死滅しても毒素が残存し、発症する場合があります。
食べ物を食べた3~5時間後に唾液の分泌が増加し、吐き気が起こり、続いて嘔吐が起こります。少し遅れて腹痛や下痢が起こります。
軽症の場合は、吐き気・嘔吐のみで下痢は起こさないで終わりますが、重症の場合は十数回の嘔吐や水様性の下痢を繰り返し、脱水症状を起こして衰弱してしまうことがあります。時には37~38℃の微熱を伴い、血圧の低下、胸内苦悶(くもん)、意識の混濁、脈拍の減少などの中毒症状を起こし、緊急入院を必要とする場合があります。
一般的には一過性で経過もよく、1~3日で回復して予後も良好です。死亡することはほとんどありません。
特別な治療も必要ありませんが、重症の場合は脱水症状を改善するため、点滴などですばやく補水し、血圧の低下や脈拍微弱の管理に十分注意する必要があります。
手指消毒、空間除菌を行うことで感染予防になります。